その17 日米のE-メール比較

ニューヨーカー達はそぞろ歩きの観光客をすり抜け、本当にテンポ早く、かなりの速さで歩きます。筆者もそのスピードに慣れてしまっているからか、日本からのお客様を案内する時などは、気をつけないと、速く歩きすぎてしまいます。そんなテンポ の速い、ニューヨーカーたちの E-mail は本当に、返事が早く、そして短く、簡潔なのが特徴です。また、ファーストネームで「Hi Atsushi!」という ような感じで、導入部分もあまり仰々しくなく、単刀直入な場合が多いと思います 。もともと、ニューヨークのみならず、アメリカの ビジネスではスピードが重視されると思いますが、E-mail の位置付け、考えが日本とは異なるのでは ないでしょうか。つまり、アメリカの E-mail はか なりスピードが重要視され、日本での E-mail は正確さが要求されるのではないかと、筆者は考えています。

E-mail が登場する前も後も、こちらの会社では良くメモを使います。文字のやりとりというのが ひょっとしたら日本より多いかもしれません。また、どんなドラッグストアでもスーパーでも日用品を扱うお店は必ずグリーティング・カードを売っています。つまり、もとより短いメッセージを添 えて、カードをやりとりする文化ですし、職場でも上司から部下へ、部下から上司へ、はたまた同僚同士で、メモのやりとりを良くする印象があります。日本だと口頭で済みそうな話であっても、これをやっておいてねとメモを渡します。これは言った 言わないという責任の所在も関係するのかもしれませんが、メモだけに、単刀直入に、簡潔に書かれています。

そして、アメリカの E-mail はこのメモの延長線上にあるのではないか、ゆえに簡潔なのではないか?と考えています。良い点はまさにスピードに あります。ただ、簡潔だけに情報が足りない場合もあり、質問するとまた短く返って来たりして何度 かやりとりをしないといけないケースも多くあり、 瞬く間に、受信箱が同じような件名のメールで一杯になってしまうのが難点でしょうか。

一方で、日本はどうでしょうか? まず、返事が 来るまで、とても時間がかかります。おそらく社内で検討をして意思決定に時間をかけて回答するのでしょう。また、日本企業は、内容についてもかなり正確に返すのが特徴です。3つの質問への返答 で2 つまでは即答できてももう1つは調べないとわからないとなると、最後の1つが揃うまで回答はしないことも多いと思います。

また、まるで手紙の延長かと思うくらい、とにか く丁寧です。◯◯株式会社 代表取締役 ◯◯様 平素より大変お世話になります。から始まり、最後には、今後ともどうぞよろしくお願いします、で締める。長めではあるが、丁寧にしっかりと内容が書かれているで、そんなに何度も何度も更問をしなくてもいいのは良い点でしょう。そう、私は日本 の E-mail は手紙の延長にあるのではないかと考えています。

さて、メモと手紙の違いぐらいある、日米の E- mail 慣習の両者がそういったバックグラウンドを 知らずに コミュニケーションするとどうなるで しょうか。日本企業サイドには英語というハンデ もあるので、ただでさえメールの返信に時間がかかります。筆者でさえ、既にこちらのテンポに慣れてしまっているので日本へ送ったメールの返事がこないと、メールが届いたのであろうか?あるいは何か失礼があったのだろうか?と、本当にどぎまぎします。アメリカ企業も同じように感じるはずです。そして、自然とコミュニケーションが疎遠になって、最後には途切れてしまうということになりかねません。

そうならないためにも、日本企業へのアドバイスとしては、アメリカの会社から引き合いをもらったら、まずは、引き合いに対応する価値のある相手かどうかを瞬時に見極め、「スピードが重要視される国からの引き合いだ!」と意識を変えていただき、それに合わせて、まずは返信した方が良いと考えます。ニューヨークの感覚では 24 時間以内の返信が望ましいです。もちろん、全ての答えを返す必要はありませんが、受信しました!くらいは 24 時間以内に返してあげましょう。 また、◯◯日中に、もしくは◯◯日までに返事しま す、も大事かもしれません。よく、「メール頂きました。社内で検討して回答いたします」というメールの後、うんともすんとも連絡がなく、いつになったら連絡が来るのか?と思うこともあります。できればですが、◯◯日までに回答しますという約束が出来ると、待つ方も安心して待てます。 考えてみたらこれは、何も日米ではなく、日本企業どうしでも必要なマナーかもしれませんが。
皆様の今後のコミュニケーション、ビジネスの 参考になれば幸いです。

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