その13 アメリカの展示会の特徴
さて、昔話はちょっと小休止して、アメリカの展示会の特徴を述べたい。
アメリカの展示会はある意味ドメスティックである。日本の展示会に似ているかもしれない。これは、欧州の展示会に比べてと言う意味である。
ドイツ、フランス、イタリア、どこをとっても大きな有名な展示会がある。ドイツなど、展示会そのものが産業になっている。50万平米の会場なんてのがある。ちなみに、ビッグサイトは10万平米そこそこである。
アメリカの展示会は、欧州に比べて小さいかもしれない。ラスベガスで開催されるようなCESなどは大きいのかもしれないが、単独の展示会場として、世界的に大きいと言えるのは、シカゴのマコーミックくらいではなかろうか。
ニューヨークの展示会場は小さい。おそらくビッグサイトの半分か6割くらいだろう。同じような島であるシンガポールや、香港島にも立派な展示会場があるので少し残念な気もするが、マンハッタンにある展示会場というのも考えてみたらすごいかもしれない。
ジャビッツ展示会場のことである。タイムズスクエアからあるいて20分強くらい。マンハッタンといっても、ウエストサイドにあり、結構便が悪く、ええい、歩いてしまえと歩いたことも多かった。今では、地下鉄7番線がHudson Yardsまでつながり、とても便利になった。
ちなみに、ジャビッツは私のいくつかめのふるさとといっていいほど、苦楽を味わった展示会場だ。ジェトロ時代に、ジャパンパビリオンを組織させていただいただけでも、NY NOW(古くはギフトショー)で8回、ICFF4回、食の展示会で1回と13回、パビリオンを出させていただいた。その後独立してからも、自ら出展する形で、NY NOW4回、そしてブースのコンサルで2回と6回。裏道、抜け道から、設営期間中にだけ開くデリのことなども含めて、搬入搬出の心得やブースの作り方なども含めて、もうたぶん私より詳しい人はそんなにいらっしゃらないと思う。
さて、アメリカの展示会の特徴に話を戻そう。
特徴は、反応がビビッドに早いということだ。これは、日本や欧州と比べて本当にスピード感がある。雑貨、消費財のギフトショー、現在のNY NOWなどでは、ばんばんバイヤーがオーダーを入れる。特に地方の小さいお店で、あまり買い付けのチャンスがないようなところなど、買い付け予算をもって回っているようだ。そのため、様子見で展示会に出ようものなら、バイヤーはがっかりどころか、怒ってしまうこともある。ので、準備が大切だ。
また、商品次第では、大手との商談もばんばん出来る。欧州や日本と比べて、このあたり、たとえ大手企業が相手であっても、商談に入るまでの抵抗というか、スピードは早い。
つぎに、冒頭書きかけたが、ドメスティックなところだ。もちろん、欧州、中南米、はたまたアジアなんかからも多くのバイヤーは来るし、展示会によっては世界中からやってくるようなのもある。が、一般的に、来場者、バイヤーはドメスティックかもしれない。されど、世界最大の経済規模を誇る、米国である。ドメスティックが良いのか、国際的な展示会が良いのか、よくよく考えてみて欲しい。
最後に、展示会自体が欧州に比べてやや小振りである。欧州が巨大すぎるわけで、小振りといっても大きいのは大きいが。欧州の有名展示会に出るのも良かろう。ただ、何十万人も来場者があり、1万社も出ているような超巨大見本市に参加して、果たして埋もれてしまわないのだろうか? 出ることが目的になっていないか? ビジネス的にどういう成果を目指すべきなのか、そういったことを踏まえると、アメリカの展示会はちょうど良いサイズというか、小さくもなく、大きすぎない。
ひとつ、例を上げると、ニューヨークで開催さえる、ICFFというのがある。デザインに重きをおいた、インテリア、建築、建材の見本市であり、毎年5月に開催される。デザイン、インテリアというと、4月にミラノ・サローネがある。
もちろん、サローネはインテリア、デザインの世界最大の祭典であり、ミラノ中でさまざまなイベント、展示会、発表会などが開催される。海外からの来場だけで30万人とも言われている。郊外のメイン会場も巨大であるが、それだけでなく、本当に見て回るのに軽く1週間はかかるほど、多くの会場で多くの展示が行われている。日本企業、ブランドも多く参加していると思う。
一方で、ニューヨークのICFFはそのサローネから約1ヶ月後に開催される。もう、比べるのもおこがましいくらい小振りであるが、ニューヨークはデザイナーの街でもある。世界中の建築を手がける建築事務所、インテリアデザイナー、さらにはファッションデザイナーもいる。こういった、デザイナーとの良い出会いになり、ここでの縁で、有名建築事務所に見初められ、世界中の案件で使われたという好例もあった。つまり、展示会自体は小さいが、ビジネスになる可能性はとても大きいのではないか?と思う。
インテリアの展示会となるとどうしても、家具、と考えるかもしれないが、ICFFは素材を出すのが良い。日本には素材力がある、ニューヨークのデザイナーが驚くような建材がたくさんあると思う。われこそはという会社は是非挑戦してみてほしい。