富山県・高岡市にシカゴ地区のバイヤーを招聘
10月14日―19日の6日間、当社のコーディネートにより、富山県高岡市にシカゴの2店舗からそれぞれバイヤーを招聘しました。
シカゴ地区の2店舗からバイヤーを招聘
本プロジェクトは高岡市によるイニシアチブで、ジェトロ(富山、シカゴ事務所)が協力、弊社が企画ならびに実施を受け持つ事業です。シカゴ地区のバイヤー2名は精力的に高岡市の地場企業を訪問し、多くの買い付けを行なっていただきました。
バイヤー2名のうち1名は日本どころかアジアに行くのも初めてで、もちろん訪問した日本企業のみならず、日本の風土、歴史、食事など、多くのことに感嘆していただくことができ、日本の、そして高岡市のファンとなっていただけたのではないかと思います。
空港から地方までの移動すらもプレゼンテーションとなる
羽田空港に降り立ってから、地方への移動中に見る、アメリカに比べてゴミの少ない綺麗な街並み、分刻みで発車する新幹線。要所要所でテキパキと働くさまざまな現場のスタッフ。洗練され、クオリティーの高い食事。これら全てが地方を理解してもらう前の日本そのもののプレゼンテーションとなります。以前招聘したあるバイヤーは初めて日本に訪れた際「こんな素晴らしい国が作るプロダクツが悪いわけがない」と評価していました。
ホームならではの、もてなし
ニューヨークにいますと、国・地方自治体、業界団体をはじめ日本企業もこぞって、「ニューヨークにおける発信」に取り組まれています。これはこれで素晴らしいと思いますし、日本にとって取り組みやすい近隣のアジア諸国などと比べ、米国、とりわけニューヨークは距離もあることからなかなかハードルが高くなっていると思いますが、そんな中でも「ニューヨーク」を選ばれ、当地においてなんらかの事業を行うということは非常に評価されるべきことだと思います。
一方で、日本から見れば、ニューヨークは「アウェイ中のアウェイ」、例えば展示会に出たり、イベントを行うにしても、かなりの出費が免れません。こちらに渡航してくるだけでも、また昨今の物価高で宿泊費も相当な出費となり、さらには場所を借り、人を雇い、集客を行う。そういった一つ一つにアウェイならではの多くのコストがかかってしまいます。
バイヤーの招聘などの各種招聘事業はいかがでしょうか?
もちろん、アウェイではなく、「ホーム」である日本にお客様であるバイヤーを呼ぶわけですから、チケット代など交通費と、滞在費といった出費だけで良いわけです。日本企業がサンプルを持参してアメリカで見てもらうよりも、製造現場、ショールームなどを存分に見てもらえ、より多くの製品を見てもらうことも難しくないでしょう。受け入れる側の企業さんは、どこにも行く必要はありませんのでコストはかかりません。10社の方が日本から海外に渡航されるより、1名のバイヤーが来日し、10社を見て回るほうがコスト的に安上がりなのは言うまでもありません。ホームですからすでにあるものを活用できます。例えば、車をハイヤーする必要もなく、高岡市では市の車両を使用し、案内していただけました。地元のミュージアムやデザインセンター、そして、地元の歴史に触れていただいたり、地元の海の幸、山の幸を味わってもらったりするだけでも、その地域への理解度も深まり、バイヤーとの「絆」も築きやすいと思います。海外の展示会に出ただけで、そんな「絆」ができあがるようなことは少ないと思いますのでまさに「Price Less」な体験の提供ができる、しかも費用対効果が高いと思います。
外部の視点から見出される新たな価値
バイヤー招聘のもう一つの醍醐味は、外部の第三者の視点から、地元の「資産」を新たな価値として見出してもらえることです。
例えば今回の高岡市では、もともと仏具を製造している企業が多く、特に真鍮製の「おりん」がその代表例です。日本では、お寺や仏壇、法事などで聞き慣れた「チーン」という音ですが、海外のバイヤーからは「なんと心を鎮める素晴らしい音色だ」と評価され、「Sound Bath(サウンドバス:音の響きで心身をリラックスさせる療法)」に適しているのではないかと評価されました。地元の方々にとっては「古くからあるもの」や「当たり前のもの」であっても、外部の目を通してみると、それが価値のある資産であることを再認識できるのです。
筆者の好きな言葉に、「誰かの日常は、他の誰かにとっては非日常」というものがあります。まさにこの言葉通り、海外のバイヤーの目を通じて、日本を再発見し、そして自らの価値を再発見する機会となるのです。このような視点の転換こそが、バイヤー招聘事業の魅力であり、地域全体にとっての財産となることでしょう。
ホーム&アウェイが理想
ニューヨークでのプロモーションと日本への招聘事業を組み合わせ、ホームで、そして海外(アウェイ)の双方で有機的に事業を行う、というのが理想だと筆者は考えています。
例えばですが、海外の展示会に出る、あるいはイベントを行う。そしてその時に知り合ったバイヤーを地元に招聘する。あるいは、招聘事業を皮切りに、地元の産品を買い付けてもらい、ポップアップ的に帰国後、海外にてフェアを開催してもらう。など、ホーム(地元)、アウェイ(例えばNY)の両方で事業を実施することで、有機的に事業を組み合わせ、より少ないコストにて最大の効果を上げていくのが理想だと当社では考えます。
バイヤーの選定は慎重に
もちろん各地方(産地)にあった店舗、バイヤーの選定が最も重要です。そして招聘する時期、タイミングなども重要でしょう。バイヤーにとっては招待ということで出費がない分、キャンセルなどに心理的な負担が少なく、直前にいわゆるドタキャンをされてしまうことも可能性としてはありますので、慎重にバイヤーを選定する必要があります。
当社ができること(地方公共団体様へのご提案)
当社代表は、前職のジェトロ時代、こう言った考えのもと、多い年には何十名ものバイヤーやメディア関係者を日本に招待していました。この度も高岡市にバイヤーを招聘するお手伝いをしましたが、2014年〜パンデミックが始まるまでは、岐阜県庁の事業としてバイヤーを岐阜県に毎年のように招待する事業を担当させていただきました。
弊社ではどういったタイミングでどういったバイヤーさんを地元に送るかのプランニングに加え、どういったお店が良いのか、バイヤーの選定、実際派遣に関する事務的なオペレーションに至るまでノウハウ、経験が蓄積されています。
特に自治体など公共団体のご依頼で事業を実施した経験も多数ございますので、予算要求の際の事業立案から、実際のプランニング、オペレーションに至るまでご相談いただければ、バイヤーさんそして地元の企業さん双方がメリットのあるようなプロジェクトの立案を行うことが可能ですので、ぜひともお問い合わせください。
地方企業にとっても重要な機会に
バイヤー招聘事業は、自治体だけでなく、地元企業にとっても新たなビジネスチャンスを創出する絶好の機会です。地元企業の皆様には、こうした事業の意義をしっかりと理解し、ぜひ積極的に自治体に対してバイヤー招聘の実施を提案していただきたいと考えています。具体的には、「自社の製品を実際にバイヤーに見てもらいたい」、「地域産品の魅力を直接伝えたい」などの要望を自治体に働きかけることが重要です。
企業からの積極的な働きかけが、自治体の事業推進の原動力となり、地域全体でのバイヤー招聘の機運を高めることにつながります。地元企業と自治体が一体となり、高岡市のような成功事例を積み重ねていくことで、地域の魅力がさらに広まり、結果として地域経済の活性化にも大きく寄与することでしょう。